ストーリーテリング授業デザイン

「何から書けばいい?」を解決:中学校授業で生徒が物語を始めるための具体的ステップ

Tags: ストーリーテリング, 授業アイデア, 中学校, 創作指導, 表現力, 書く力, 導入, 実践事例

生徒の「書き出し」を後押しするストーリーテリング指導

中学校の授業で、生徒に自由な表現や創造的な思考を促す活動として、ストーリーテリングや物語作成を取り入れることは有効な方法の一つです。しかし、多くの先生方が経験されているように、「何から書けばいいか分からない」「アイデアが出てこない」と、生徒の手が止まってしまう場面に遭遇することがあります。白紙のまま時間だけが過ぎる、あるいは定型的な表現に終始してしまうといった状況は、生徒の自信喪失にもつながりかねません。

このような課題に対し、ストーリーテリングの視点からアプローチすることで、生徒が物語を始めるための具体的な「きっかけ」や「足がかり」を提供することが可能になります。難しい理論や高度なツールは必要ありません。少しの工夫と具体的なステップを示すことで、生徒は書き出しのハードルを越え、自分自身の言葉で表現する喜びを感じられるようになります。

本記事では、生徒が物語作成の最初の一歩を踏み出すための、授業で実践可能な具体的なステップとアイデアをご紹介します。

なぜ「始まり」が最も難しいのか

生徒が物語作成に戸惑う背景には、いくつかの理由が考えられます。

これらの難しさを理解し、特に「物語の始まり」に焦点を当ててサポートすることが、生徒のストーリーテリング能力を育む上で効果的です。

物語の「始まり」を見つけるための具体的ステップ

生徒が「何から書けばいい?」という状態から抜け出し、物語を始めるための具体的な指導ステップをご紹介します。これらは単元や教科を問わず、様々な場面で応用できます。

ステップ1:テーマ・題材の「ピンポイント」化をサポートする

「自由なテーマで」という指示は、かえって生徒を悩ませることがあります。まずは、生徒が取り組みやすい、あるいは関心を持ちやすい「狭い範囲」に焦点を当てるサポートをします。

ステップ2:「誰の物語か?」(主人公の設定)を明確にする

物語は基本的に誰かの視点や経験を通して語られます。生徒が描く物語の中心となる「誰か」を具体的にイメージさせることが重要です。

ステップ3:「どこでの物語か?」(舞台設定)を具体的にイメージさせる

物語の舞台は、出来事が起こる場所であり、登場人物の感情や行動に影響を与えます。場所を具体的にすることで、物語のディテールが生まれやすくなります。

ステップ4:「何が起こる物語か?」(きっかけ・出来事)のヒントを与える

物語は、何らかの出来事(きっかけや変化)によって動き出します。生徒に「こんなことが起きたらどうなる?」という問いかけを投げかけます。

ステップ5:これらの要素を組み合わせるワークショップ形式の導入

ステップ1〜4で生徒が考えた要素(テーマ、主人公、舞台、きっかけ)を組み合わせる活動を取り入れます。

具体的な授業での実践例

これらのステップを、特定の教科や単元に組み込む具体的な例をご紹介します。

これらの実践例は、生徒が「知識」を単なる情報として捉えるだけでなく、「物語」として捉え、感情や想像力を伴って理解することを促します。

導入における注意点と工夫

ストーリーテリングを授業に取り入れる際には、以下の点に留意するとより効果的です。

まとめ

生徒が物語作成を始める際の「何から書けばいい?」という問いは、創造的な活動における普遍的な課題です。しかし、今回ご紹介したように、テーマや題材のピンポイント化、主人公や舞台設定の明確化、きっかけのヒント提供といった具体的なステップを踏むことで、生徒は物語の「始まり」を見つけやすくなります。

これらの方法は、特別な準備や高度な技術を必要としません。普段の授業の導入や活動の一部として、手軽に取り入れることができます。生徒が自分自身の物語を語り始める最初の一歩をサポートすることは、彼らの表現力や思考力を育むだけでなく、学習内容への主体的な関心を引き出す力となります。ぜひ、先生方の授業に、ストーリーテリングによる「書き出し」サポートを取り入れてみてはいかがでしょうか。