ストーリーテリング授業デザイン

中学校授業で生徒の問いと探究心を育むストーリーテリング活用法

Tags: ストーリーテリング, 探究学習, 問いかけ, 主体性, 授業改善, 中学校

ストーリーテリングが生徒の問いと探究心を刺激する

日々の授業において、生徒が受動的に知識を受け取るだけでなく、自ら疑問を持ち、深く掘り下げていく姿を見たいと考えている教員は多いかと存じます。しかし、どのようにすれば生徒の内発的な興味や探究心を引き出せるのか、試行錯誤されている方もいらっしゃるかもしれません。

ここでは、授業にストーリーテリングを取り入れることで、生徒の「なぜ?」という問いや、さらに深く知りたいという探究心を育む方法について考えます。複雑な準備や特別なツールは必要ありません。普段の授業に「プラスアルファ」として手軽に試せる実践的なアプローチをご紹介します。

なぜストーリーテリングが問いと探究を促すのか

物語は、人の心を惹きつけ、聞き手の感情や思考に働きかけます。教科書に書かれている事実やデータも、ストーリーという形を通して語られることで、生徒にとってより鮮やかで、忘れがたいものとなります。

ストーリーテリングが問いや探究を促すのは、主に以下の点によります。

授業で問いと探究を育むストーリーテリングの具体的なステップ

生徒の問いと探究心を引き出すために、ストーリーテリングを授業に組み込む具体的なステップを以下に提案します。

ステップ1:生徒に問いを持ってほしい学習内容を選ぶ

まず、単元や授業の中で、特に生徒に疑問を持ったり、深く掘り下げたりしてほしいポイント、あるいは生徒がつまずきやすい概念などを特定します。すべての内容でストーリーテリングを使う必要はありません。効果的な一点に絞ることで、取り組みやすくなります。

ステップ2:関連する「物語」を用意する・見つける

選んだ学習内容に関連する、生徒の興味を引きそうな短い物語やエピソードを探すか、簡潔に作成します。難しく考える必要はありません。

既存の伝記や科学読み物、ドキュメンタリー映像の一部などを活用するのも良いでしょう。数分で語れる、あるいは短い文章や映像で見せられるものが手軽です。

ステップ3:物語を提示し、生徒に「疑問」を探させる

用意した物語を生徒に提示します。この際、「この話を聞いて、どんなことが気になった?」「『あれ?』と思ったところはあった?」のように、生徒自身の感じた疑問点に意識を向けさせます。

物語を語る際は、感情を込めて、生徒がその世界に入り込めるように工夫するとより効果的です。映像や写真、簡単な図などを補助的に使うことも有効です。

ステップ4:疑問を共有し、「問い」へと発展させる

生徒から出てきた疑問点を全体で共有します。最初は漠然とした疑問でも構いません。教員が少し整理したり、「それはどういうことかな?」「もっと詳しく知りたいことは?」といった問いかけを重ねることで、探究につながる具体的な「問い」へと練り上げていきます。

グループで話し合わせる時間を設けることも有効です。「この話で一番不思議に思ったことをグループで話し合ってみよう」「グループで一つの探究テーマを決めてみよう」のように促します。

ステップ5:問いに基づいた探究活動につなげる

生徒自身が立てた、あるいは共有した問いに基づいて、探究活動を行います。図書館での調べ学習、インターネットでの情報収集、簡単な実験計画、他の資料との比較、ディスカッションなどが考えられます。

ストーリーテリングで生まれた生徒の「知りたい」という気持ちが、探究への強い動機付けとなります。

中学校での実践例

導入にあたっての注意点

終わりに

ストーリーテリングは、単に知識を伝えるだけでなく、生徒の心に火をつけ、自ら学びに向かう力を引き出す強力なツールとなり得ます。特に、生徒の「なぜ?」という素朴な疑問や、さらに深く知りたいという探究心は、学びの最も重要な原動力です。

今回ご紹介した方法は、特別な準備を必要とせず、普段の授業に少しの工夫を加えるだけで実践できます。まずは一つの単元や、生徒の反応が気になる箇所から、短い物語を語ることから始めてみてはいかがでしょうか。生徒たちの輝く瞳と、活発な問いかけに出会えるかもしれません。